平成14年度シンポジウム内容

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  本会会員各位は電気、電子、情報、化学、機械、金属、原子力、建築、土木を始めとする幅広い分野の技術者です。そして、固有の専門技術をお持ちになっており、新しい事業開発への創造、技術展開ができ得る方々です。本年度のシンポジウムは、市場の成熟化、グローバル化、少子化などの現状の中で、環境に配慮しつつ、知識創造型社会に向けた新産業を如何に創出していくか?そのための事業開発課題を探ります。
                                               主催:科学工学技術委員会

開催日時 : 2002年8月24日(土) 午後1時〜5時
会  場  : 中央大学駿河台記念館

     
東京都千代田区神田駿河台3−11−5  ( 03−3292−3111)
テ ー マ :知識創造・環境調和社会における新産業の創出と
       事業開発課題の探求
T部 : 基調講演
     講 師 : 飯 田  汎  先生
          鞄激血o営研究所 特別研究員 ,東京大学 工学部講師
U部 : パネラー講演
    @テーマ:どう築く、インターネット時代の新しいビジネス手法
     講 師:児 玉  充 晴 先生
          NTTコミュニケーションズ梶@ITビジネス推進部 部長
    Aテーマ:21世紀のエネルギー戦略と新文化の創造
          −固体高分子型燃料電池の開発を通して−
     講 師:幾 島  賢 治 先生
          (財)石油産業活性化センター 技術業務部
V部 : パネルディスカッション 質疑応答−聴講者の質問にパネラーが回答
基調講演

はじめに
 若い方々に少し夢のある言葉、技術を学ぶ者にとって夢のある言葉はないかと常々考え「ハイテク文化立国日本」はどうだろうか?
これをキーワードに様々なことを考えている。

新社会の建設と世界にむけたニッポンの貢献について
 ボーダレス化という言葉が定着していく陰で国家意識に対する気分が希薄になった。今は何が肝心なことかを考えず、未曾有の債務残高を前に未だに将来の国家像を鮮明にできず、国益すら損なわれない状況下におかれる政治社会、次世代を形成する青少年にむけた展望と目標を明確に提起できずに教育崩壊の懸念さえ感じさせる教育界、科学技術立国という立国原理の要が明らかにされながら科学技術への関心の低下に歯止めがかからない日本の社会など、危機への対応能力に欠ける現在の国のあり方は国家衰亡の兆しすら感じさせられる。
 社会に蔓延する閉塞感を打破するには、やはり明快な国家のビジョンの提示と有能なリーダーの統率力、そして国全体の成り行きを慮る国民の和とともに日本人のもつ固有の精神が、将来はともかく、今は不可欠なのである。

中国の工業化と製造業の課題について
 長期にわたる景気不振と、中国を始めとするアジア諸国からの供給圧力を背景に、日本経済の支柱である製造業の将来像は、極めて見通しにくくなっている。我が国における現下の経済的困難は、過去の精算という巨大な問題とともに、未来の創造という課題の前に立ちはだかる中国の躍進に伴って発生する日本の空洞化問題が有る。モノづくり大国日本が、研究開発や高付加価値部門で外貨獲得すべきという考え方には限界がある。日本にとって製造業は不可欠であり、その将来を考えるとき、次世代型ビジネスモデルの構築を急がねばならない。21世紀は生活者が積極的に経済活動の中に参加し、自分の存在を発揮する時代となることが期待されている。価値重視のモノづくりが基になる文化の中で、サービスとは何かを追求することが努めとなろう。20世紀がモノづくりで儲ける時代なら、21世紀はサービス提供で儲ける時代といえる。

21世紀社会の形成にむけたビジョンの構築
 高度情報社会のもとで、高度化された工業製品の価値とともに、それに付加される知識、またそれをもとに生み出される情報が重視される社会、いわば知識創造社会が21世紀の我が国産業社会の底流をなす。また地球環境保全、資源エネルギーの課題など地球規模の制約を受け、何よりも環境調和を重視することが21世紀の潮流となる。21世紀の人類が幾多の地球規模の課題を乗り切り、ソフトランディングするためには、科学技術を信頼し、人類の創造性に頼る以外に道はない。こうした意味で21世紀社会は環境創造社会といえる。これら二つの潮流が並立一体となった社会がこれからの世界における産業社会基盤を形成する普遍的な社会の姿となろう。こうした社会の基盤にそれぞれの国における独自の文化をのせて社会が形成される。そしてこうした取組も、地域それぞれの人的資源や自然環境などの条件のもとに、地域ごとの文化を形成しつつ、世界に発信することが基調との一つになるであろう。こうした社会の目標を文化創造社会と呼ぼう。21世紀社会の目標として、環境創造社会、知識創造社会、文化創造社会の3つの創造社会を基盤としたハイテク文化立国日本の建設を、常々あげてきた。世界の先進諸国は等しくこうした枠組みの中で、新しい科学技術の発展と新しいビジネス創出にむけて取組を行うことが期待されている。このような新しい先進社会に根ざす製造業の役割は何であろうか。それぞれの社会に応じた製造業の姿から次世代製造業の目標がさだまろう。

環境創造社会の実現と日本のミッション
 先ずは、環境創造社会の視点から、新たな技術の課題、そしてビジネス創造にむけた課題を考えてみたい。これまでの技術の目標設定を「快適性・利便性の追求」から「将来世代の安全性」へと変更することが必要となろう。資源環境型社会への環流を促進する制度的システム変更や、経済社会システムに関わる技術者の役割を全て、こうした方向に向けることが必要とされる。世界でいち早く、環境創造社会を実現し、未来創造にむけたハイテク文化立国日本のミッションと考えては如何であろうか。

文化創造への取り組みで閉塞感の打破を
 高度成長時代のかつての我が国にあっては、「モノ」の充足によって幸福感がもたらされたが、今やモノがかつてほどの幸せをもたらすとは思えない。現在の日本が直面している不況の原因の一つに消費不況の側面があることはこのことを物語っており、この点にメスを入れずに社会の真の進歩はない。今、日本の社会が必要としていることは、新しい社会を築こうとしている新たな動機である。それには明快な国家観と国民それぞれが自己実現する意志をもつことが必要とされる。これからの消費社会では、新しいビジネスモデルを描き、それを実現させるに必要な、独創的な発想を持ち、困難に挑戦していく人材が求められている。社会の文化活動と産業技術力は車の両輪であり、製造業と一体化したサービス産業を立国原理とした文化創造社会の到来がくることを期待したい。

新時代の幕開けと知識創造社会への転換
 今、先進国である日本の担うべき使命や産業空洞化の前に、経済社会における日本のこれからの役割が問われている。日本の社会が目をつけるべき高付加価値とは何か。先ずモノづくりで文化的な要素を大切にして行くべきである。モノづくりと文化は元来、密接な関係にあったが、近代産業発展の過程でそれが分離してしまった。
ただ、今は情報技術の進化によって文化的、芸術的な表現と技術の高度化が統合できるようになり、そこに空洞化を乗り越えられる日本のチャンスが開けてくることも期待される。人的資源と自然の豊かさ以外に資源もなく、国際競争力強化が問われている我が国にあって、知識創造の価値の重要性はますます高くなっている。企業にとって新しい付加価値を生む「知力」を如何に強化すべきかが大きな問題であり、日本は「知」と「モノづくり」を一体化したところに活路を見出すべきである。情報社会とは、全ての人がいかなる情報にも容易にアクセスできることを特徴とするが、情報をいかに多くもってしても問題は少しも解決しないどころか判断が一層困難になることは近年の社会の混迷する様をみれば理解されよう。情報は体系化され知識となし、知識は眼前の課題や未来の願望の実現に知恵として活かしてこそ意義がある。知力が自慢できない企業は新時代には乗り切れない。それぞれの知恵を武器に自立的、創造性あふれる多様な社会の実現をはかることがこれからの社会と云えよう。


パネリストの講演
 @児玉充晴
 NTTの通信サービスを使ってもらうためには、ユースウェアを開発するベンチャー、中小企業の新産業創生力が不可欠。しかし、時代が大きく転換していて新産業の創生と拡大は難しい。ということで、ハーバードビジネススクールで新産業創生の修羅場を仮想体験により、日本の企業の限られた島国的発想では大きな発展は難しいと実感。経験上、今時の儲け方のコツは21箇条におさまる。
 新産業をやるには情報収集力と情報加工力がポイント。従って、言われたことを真面目にこなす社員はこの時代ではリスクとなる。悪巧みのできる社員が財産になる。
 人、物、金をかければ技術の開発はできる。しかし人、物、金をかけてもできないのは「儲けるしかけ」の開発。
 シーズは山ほどあるがニーズという未知暗黒大陸への挑戦(ゆでガエル、という他の会社の餌にされないためには、@タイミングの定義と見極め、A競争優位戦略における留意点、Bいろいろな経営資源の活用とリスクヘッジ、Cインターネットビジネスを社会現象化が重要。
 勝者のセオリーは、新技術の利用技術研究が最重要の課題であり、情報を加工する企画力と信念に基づく行動力が新産業を切り開く勝者のカギに。そして大学では、大学の知的財産をもとに、ビジネス開発の学問体系を確立し、実践的なビジネス開発の実験による教育が重要。
 知的生産ビジネスに適合した企業体質への転換にむけた取り組みは、どんな情報を、どこからどう収集して、知識・知恵を加えてどう加工して、どう高く売るか、が必要。
 結論として、カリフォルニアで金が出たゴールドラッシュの時に儲かったのは道具屋(情報が集まる)。現代の道具屋であるNTT(?)を利用する。また、「始めるのはアメリカ」「刈り取るのは日本」の実現にむけた日本再生の努力を。

 A幾嶋賢治
背景
 燃料電池は水素と酸素の化学反応で発電される発電装置で、発電の源である酸素は空気を利用できるが、水素は水素を含んだ物質(燃料電池用燃料)から取り出す必要がある。燃料電池用燃料としては天然ガス、メタノール、石油系製品およびGTL油(天然ガスから製造される液体燃料)およびジメチルエーテル(DME)等があげられている。
《中略》
このように製油所では水素を製造しているが、これを燃料電池用の水素として用いることは運搬および貯蔵所等のインフラが整備されていないため、現実的ではない。そのため、燃料電池への水素の供給は、水素を必要としている場所で水素を製造し、燃料電池に投入するシステムが具現化されつつある。

改質方法
 燃料電池用燃料から水素を取り出す改質技術としては水蒸気改質法、部分酸化法、自己熱改質法の3種類がある。《各改質法の詳説略》
 
燃料電池用の燃料
 今、説明の改質装置を使用して、水素を取り出す燃料電池用の燃料としては、天然ガス、メタノール、石油系製品《詳説は略》
燃料電池自動車としてはナフサおよびガソリンが適しているが、ガソリンは混合物のため改質技術に課題が多く、この課題を解決する必要がある。家庭用としては、ナフサの使用も可能であるが、過程での貯蔵等の安全性から判断すると灯油がてきしている。
 GTL油《詳説略》一方、製造原価の算定では、エクソン社が約20ドル/バレル、石油公団が約18ドル/バレルを発表している。この製造原価は各社により評価の前提条件が異なるため、現実の値を推定することは困難であるが、しかしながらこれらの製造原価は現状の石油(原油価格)とほぼ同じであり、GTL油は市場競争力を持った魅力ある装置であることが予想される。
この技術を現在、保有しているのはサソール社、モスガス社、シェル社およびエクソン社である。《各社の詳説略》

燃料電池用燃料の予想
 燃料電池の実用化が近づくにつれて、燃料電池用燃料の選択が重要となってきている。燃料電池自動車および家庭用燃料電池向けに、水素を一度に多量に製造し、供給することは貯蔵設備、運搬等で問題が多いため、現状では液体燃料の燃料電池燃料用の燃料から水素を取り出す方法が優位と考えられている。
《詳説略》

まとめ
 《略》
 発電装置として多くの優れた機能を有する燃料電池の燃料としては天然ガス、メタノール、石油系製品、GTL油およびジメチルエーテル等があげられるが、最終的にはこれらの利便性、経済性および環境調和等により21世紀初頭には燃料の姿が明らかとなるであろう。


パネルディスカッション
 冒頭に、飯田先生から「最終的にこうだ」という姿になりにくいかも知れませんが、時間をかけて知識を共有化して、何かに取り組んでいかなければならないと思うが、いわば一つの切り口にしていただければとの思いです。まだまだ聞き慣れないキーワード、言葉が沢山あると思いますが、皆さん一緒に参加のもとに進めたいと思います。ディスカッションに入る前に、私を含めてお二方の先生に質問がございましたらどうぞ。

質問:飯田先生のお話の中で、ソフトランディングということを仰有いましたが、どういう走り方なのですか?
回答:飯田先生
質問:幾嶋先生に燃料電池の利便性とは?具体的に
回答:幾嶋先生
質問:幾嶋先生に、車の方で燃料電池を使うと環境に良いと一般的に言われているが、それはあくまで走るために対する環境に良いというだけだと思うんですが、実際に水素を作り出すところに対して、走るところということでエネルギー効率は本当に良くなっているのでしょうか?
回答:幾嶋先生。そこのところは時間の関係で省いたが、データを見せます。環境問題のほうは違った解釈のようなので確認しておいていただきたい。《略》
このデータは残念ながら日本では取っていない。米国環境省のデータです
質問:飯田先生、21世紀ハイテク文化立国というふうに仰有られましたが、「文化で立国する」というところが自分は理解できないのですが。
回答:飯田先生
質問:幾嶋先生、燃料電池のもととなる水素のことですが、石炭と石油と天然ガスの3つを挙げられて石油が水素の供給源の主役になるだろうととのことでしたが、その理由は?
回答:幾嶋先生
質問:幾嶋先生、ソニーがノートパソコン、オーディオ機器のバッテリー用に燃料電池を開発したとの記事を見たことがあるが、前の質問のメタノールを使うかたちなのかなとも思っているのですが御存知なら教えてください。
回答:幾嶋先生

 飯田先生から、まだまだ御質問はあるかと思いますが、ディスカッションもしなければならないので、スタートを切った後でまた伺いたいと思います。

以下、敬称は略。
飯田:最初に私共が今考えている考え方が妥当なのかどうか。先程から21世紀型の社会は一体どういう社会のイメージなのか。これを共有化できないと一人で頑張っても難しいわけですが、知識創造社会、環境調和社会、文化創造社会、こういったものが基盤なんだと思いたい訳ですが、この辺についてお二人の先生からそれぞれの立場からイメージについて少し探るというか、違和感があるとかないとか、そう言ったことを含めてお話しいただきたい。
児玉:約6分30秒
幾嶋:6分
飯田:今日に至るまでの工業社会を支える石油。石油の埋蔵量、分布にかなりの偏りがある。あと石油は40数年と言われていますが、中国やそれ以外の途上国が極めて急速にその使用料を増していったら前倒しに枯渇の問題が起こりはしないか。ややそんな心配もある。幾嶋さんの母体の(財)石油産業活性化センターは石油の問題について、それをどんなスタンスで節約する文化を創ろうとか、消費のためのあり方についてなど、その方向性について伺いたい
幾嶋:約3分
飯田:3つの創造社会、知識創造とか環境創造とか、こういったキーワードについて会場の方から御意見がございましたら。
会場:児玉先生、儲ける方法がかなりアクティブといか攻撃的な感じを受けたのですが、一方、飯田先生の調和という文化というか、そこから考えると道徳的というか、農業国である日本人の武士道とか潔いというか、考え直さないといけないのかと思ったが
児玉:約5分
飯田:約7分
会場:定年の1年前からGDPという指標に注目して、この点から日本の21世紀を解明してみようと思い研究をしてきた。その説明。
飯田:感想に続き、21世紀ビジネス創出の課題、新社会における事業創出。まさに今のことと関わるのですが、ハードを作らないとGDPが上がらないだろうか。このところに対し御意見を伺いたい。
児玉:約3分
飯田:エネルギーをこれまで大量生産型の工業に結びつけて大量消費型で扱ってきている訳ですが、これがどうも分散型に置き換えられて行くという姿、これは否定できないのではないか。燃料電池の構想自体も分散型エネルギー。そういった時代に即したビジネス、頭の構造を切り替えて行かなければと思います。それと、お二人のお話の中で、児玉先生から「小さくスタートする」そんなお話もございました。スモールビジネスから徐々に大きくなる。これはこれとして、エネルギーだとか、国家戦略だとか言いますと大企業化になって先程のGDPを幾ばくかを大きなハードなものになりますとちょっと違うかなと感じもする。幾嶋先生、エネルギーの世界ですとそこはどうでしょうか。
幾嶋:約2分
飯田:大企業が扱うもの、スモールビジネスから始まるもの、この辺のギャップが私の頭の中で生まれにくいのですが、いずれにしてもこれまでのようにプロダクト・オリエンテッドでプロダクトイノベーションとかプロセスイノベーションとかに結びつけて考えがちですが、どうも世の中に求められていることと、児玉先生が通信の仕事やっておられるがモノづくりとの一体型ということですと「プロダクトとサービス」が一体的になったイノベーションを起こして行かなければならないんではないだろうか。メーカーが、技術者がサービス抜きにプロダクトだけに邁進して何か作って行く、これは21世紀型では避けなければいけないのではないか。
児玉:約4分
飯田:エネルギーの世界、燃料電池というプロダクト、これをサービスでは定置型と車と携帯電話、パソコンがありました。結構サービスがの中味も結構幅広いとの感じも受けたのですが、何か今の研究を推進している方々の中で、サービスに対してどの程度の広がりがありますか。
幾嶋:約2分
飯田:様々な広がりを求めまして、個々人のそれぞれの産業界における役割だとか、仕事のあり方だとか、変えて行かないといけないんではないでしょうか。日本の技術開発、特性など皆様の御意見は。
会場:意見ではないが、海外に駐在して感じた教育の方法《詳説略》
会場:バブル後、目先の利益だけを追いかけ過ぎて、大切なことを忘れかけているのではないか《詳説略》
飯田:最後に、お二人の先生に一言ずつ、今出ましたスタンスについて
児玉:《略》
幾嶋:《略》
飯田:結び